アゼルバイジャンの首都バクーにて、6月30日から7月10日にかけて第43回世界遺産委員会が開催されました。新たに世界遺産リストに記載されることになった物件は以下の通りです。(各項目をクリックすると「UNESCO World Heritage Center」の英語サイトを開きます)
【自然遺産】
・中国の黄海・渤海沿岸の渡り鳥保護区(フェーズ1)(中国)
・フランス領南方地域の島と海(フランス)
・ヴァトナヨークトル国立公園‐火と氷のダイナミックな自然(アイスランド)
・ヒルカニアの森林群(イラン)
【複合遺産】
・パラチとグランデ島 - 文化と生物多様性(ブラジル)
・<拡張>オフリド地域の自然文化遺産(アルバニア)
【文化遺産】
・バジ・ビムの文化的景観(オーストラリア)
・シェキ歴史地区とハーン宮殿(アゼルバイジャン)
・ディルムンの墳墓群(バーレーン)
・ブルキナファソの古代製鉄遺跡群(ブルキナファソ)
・ライティング=オン=ストーン/アイシナイピ(カナダ)
・良渚考古遺跡(中国)
・クラドルビ・ナト・ラベムの儀式用馬の繁殖および訓練の景観(チェコ)
・エルツ山地/クルスナホリの鉱山地域(チェコ・ドイツ)
・アウクスブルクの水管理システム(ドイツ)
・ジャイプル市街地;ラジャスターン(インド)
・サワルントのオンビリン炭鉱遺産(インドネシア)
・バビロン(イラク)
・コネリアーノとヴァルドッビアデーネのプロセッコの丘(イタリア)
・百舌鳥・古市古墳群:古代日本の墳墓群(日本)
・バガン(ミャンマー)
・シェンクアンの巨石壺遺跡群‐ジャール平原(ラオス)
・クシェミオンキの先史時代燧石採掘地域(ポーランド)
・ブラガのボン・ジェズース・ド・モンテの聖域(ポルトガル)
・マフラの王家建造物群‐宮殿、教会、修道院、セルコ庭園、狩猟公園(タパダ)(ポルトガル)
・書院、朝鮮宋明理学校群(韓国)
・プスコフ建築派の教会群(ロシア)
・リスコ・カイドとグラン・カナリア島聖山群の文化的景観(スペイン)
・ジョドレル・バンク天文台(イギリス)
・フランク・ロイド・ライトの20世紀建築(アメリカ)
またメキシコの「カリフォルニア湾の島々と自然保護区群」が新たに危機遺産リストに記載され、パレスチナの「イエス生誕の地 : ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路」とチリの「ハンバーストーンとサンタ・ラウラの硝石工場群」が危機遺産リストから外されることになりました。
まずは「百舌鳥・古市古墳群」の世界遺産リスト記載おめでとうございます。日本一巨大な「大仙古墳」や三番目に巨大な「ミンザイ古墳」などを含む「百舌鳥古墳群」と、二番目に巨大な「誉田山古墳」などを含む「古市古墳群」の二つの古墳群、計49基の古墳からなります。私は2009年に当時住んでいた近くの八尾空港からセスナをチャーターして二つの古墳群を眺め、デイリーポータルZの記事にしました。→「古墳を空から見てみたい」

あまりに巨大な「大仙古墳」
ラオスの「ジャール平原」は巨大な石の壺がゴロゴロと転がる不思議な遺跡です。その正体は、紀元前5世紀から5世紀にかけて1000年に渡って築かれた墓とのこと。私は2005年に訪れたのですが、当時はジャール平原への山道に山賊が出るとのことでビエンチャンやルアンパバーンほど観光客は入ってない印象でした。今はどうなのかな。

石の壺がゴロゴロ転がる「ジャール平原」
町並みがピンク色で統一された「ピンクシティ」として有名な、インドの「ジャイプル」は記載延期勧告からの記載決議。専門機関の評価を委員会で覆すのは良いことだとは思いませんが、まぁ、それはともかくジャイプルは個人的に思い入れのある町だったりします。王宮の一角にある天文台「ジャンタル・マンタル」は既に個別で世界遺産リストに記載されていますが、二重記載になるのかな。

ジャイプルのシンボル的な存在である「風の宮殿」
「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築」は「ル・コルビュジェの建築作品」と同様、建築家に焦点を当てたモダニズム建造物群の世界遺産。現在は「グッゲンハイム美術館」や「落水荘」など米国内の8件の建造物が対象ですが、フランク・ロイド・ライトは日本にも帝国ホテルや自由学園など複数の作品を残しており、そのうち兵庫県の芦屋市にある「旧山邑邸」は今後の拡張の有力候補なのだとか。
他にも、イラクの「バビロン」やミャンマーの「バガン」といった超有名どころも見られますが、先史時代の製鉄や燧石採掘といったシブい考古遺跡も興味深いですね。来年の世界遺産委員会は中国の福州で開催。日本からは「奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島」が審議される予定です。