2020年10月20日

【文化審議会答申】国宝・重要文化財(建造物)の指定および重伝建の選定について


 昨日四国旅行から帰ってきました。10月16日(金)(私が四国八十八箇所すべてを周り終えた日でもあります)に開催された文化審議会において、「国宝・重要文化財(建造物)の指定について」および「重要伝統的建造物群保存地区の選定について」の答申がありました。内容は以下の通りです。

【国宝】
・八坂神社本殿 1棟(京都府京都市)

【重要文化財】
・旧札幌控訴院庁舎 1棟(北海道札幌市)
・犬吠埼灯台 1基、2棟 灯台、旧霧笛舎、旧倉庫(千葉県銚子市)
・明治神宮 36棟 本殿、内拝殿及び祝詞殿、内院渡廊(2棟)、外拝殿、宝庫、神庫、内透塀及び北門、神饌所及び渡廊、旧祭器庫、北廻廊(2棟)、外透塀(3棟)、北神門、外院廻廊(4棟)、東神門、西神門、南神門、宿衛舎、玉垣(4棟)、祓社、南手水舎、西手水舎、東手水舎、神橋、南制札、北制札、西制札(東京都渋谷区)
・旧神奈川県立近代美術館 1棟(神奈川県鎌倉市)
・旧山岸家住宅 4棟 主屋、板倉、味噌蔵、浜蔵、土地(石川県白山市)
・旧中村家住宅 2棟 主屋、土蔵(長野県塩尻市)
・坂戸橋 1基(長野県上伊那郡中川村)
・八勝館 9棟 玄関棟、松の間棟、御幸の間棟、新座敷棟、菊の間棟、田舎家、正門、西門、中門、土地(愛知県名古屋市)
・紅葉谷川庭園砂防施設 1所(広島県廿日市市)
・六連島灯台 1基(山口県下関市)
・角島灯台 1基、2棟 灯台、旧官舎、旧倉庫(山口県下関市)
・犬伏家住宅 15棟 主屋、座敷、応接室、書斎、宝庫、離座敷、北蔵、乾蔵、味噌蔵、機械工場、五番蔵、東蔵、巽蔵、前納屋、表門、土地(徳島県板野郡藍住町)
・部埼灯台 2基、1棟 灯台、旧官舎、旧昼間潮流信号機(福岡県北九州市)
・旧伊藤家住宅 7棟 主屋、表物置、道具蔵、骨董蔵、事務室、書生室、長屋門(福岡県飯塚市)
・西海橋 1基(長崎県佐世保市、西海市)
・旧綱ノ瀬橋梁及び第三五ヶ瀬川橋梁 2基 旧綱ノ瀬橋梁、第三五ヶ瀬川橋梁(宮崎県延岡市、日之影町)

【重要文化財(追加指定)】
・八坂神社 26棟 疫神社本殿、悪王子社本殿、美御前社本殿、大国主社本殿、玉光稲荷社本殿、日吉社本殿、太田社本殿、大年社本殿、十社本殿、五社本殿、冠者殿社本殿、四条旅所本殿(2棟)、大政所社本殿、俣旅社本殿、舞殿、神饌所、透塀、神馬舎、神輿庫、絵馬堂、西手水舎、南手水舎、西楼門翼廊(2棟)、南楼門(京都府京都市)
・遠山家住宅 3棟 米蔵、借物蔵、長屋門、土地(京都府亀岡市)

【重要伝統的建造物群保存地区】
・高岡市吉久(富山県高岡市)
・津山市城西(岡山県津山市)
・矢掛町矢掛宿(岡山県小田郡矢掛町)

 祇園祭であまりに有名な京都「八坂神社」の本殿が国宝、そして既指定の3棟に26棟が追加され社殿群の大部分が重文に。本殿は江戸時代前期の建立ですが、平安時代の建築手法をもって鎌倉時代に成立した本殿様式が高く評価されました。社殿群も八坂神社固有のものが多く、実にユニーク。


八坂神社には2008年の冬に訪れた切りなので、また行かねば

 「明治神宮」もまた社殿群が一括して重文に。元は伊藤忠太の設計指導により大正9年(1920年)に築かれましたが太平洋戦争で焼失。現在のものは昭和33年(1958年)の再建です。同じく昭和前期の建築として、昭和26年(1951年)の「旧神奈川県立近代美術館」もまた重文に。鎌倉の鶴岡八幡宮境内にあり、ル・コルビュジェの弟子である坂倉準三が設計した、日本におけるモダニズム黎明期の作品です。

 他にも犬吠埼灯台をはじめとする明治初頭の灯台4基の重文指定も特筆すべきところでしょう。これまで灯台で重文になっているのは愛知県の明治村に移築された「旧品川燈台」だけで(伊豆の「神子元島燈台」と大阪堺の「旧堺燈台」は史跡指定)、現役の灯台が重文になるのはこれが初です。

 重伝建の新選定は、加賀藩の御蔵が置かれていた物資の集散地「高岡市吉久」と、津山城下の寺町と商家町からなる「津山市城西」、山陽道の宿場町「矢掛町矢掛宿」の3件。いずれも以前から選定に向けた動きがあった地区で、まぁ、順当な感じですね。


通りに面して切妻造平入の町家が並ぶ「高岡市吉久」

 高岡市は「山町筋」「金屋町」に次ぐ3件目、津山市は「城東」に次ぐ2件目で、それぞれ城下町における町並み保護の厚さが増した感じです。


妻入と平入の町家が混在する「矢掛町矢掛宿」には本陣と脇本陣が揃って残る

 次の文化財答申は11月20日(金)の史跡等指定でしょうか。楽しみですね。

posted by きむら at 16:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

2020年01月24日

【文化審議会答申】重要有形民俗文化財の指定等について


 2020年1月17日(金)に開催された文化審議会で「重要有形民俗文化財の指定等」の答申がありました。内容は以下の通りです。

《重要有形民俗文化財の指定等》
・行田の足袋製造用具及び関係資料【埼玉県行田市】
・志木の田子山富士塚【埼玉県志木市】
・立山信仰用具(追加指定)【富山県富山市】

《重要無形民俗文化財の指定》
・近江湖南のサンヤレ踊り【滋賀県草津市、栗東市】
・近江のケンケト祭り長刀振り【滋賀県守山市、甲賀市、東近江市、蒲生郡竜王町】
・因幡・但馬の麒麟獅子舞【鳥取県鳥取市、岩美郡岩美町、八頭郡八頭町・若桜町、東伯郡湯梨浜町、兵庫県美方郡新温泉町・香美町】
・博多松囃子【福岡県福岡市博多区】
・感応楽【福岡県豊前市大字四郎丸】
・与論島の芭蕉布製造技術【鹿児島県大島郡与論町】

《登録有形民俗文化財の登録》
・武庫川女子大学近代衣生活資料【兵庫県西宮市池開町】
・別府の湯突き用具【大分県別府市上野口町】

《記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の選択》
・浜通りのお浜下り【福島県新地町、相馬市、南相馬市、相馬郡飯舘村、双葉郡浪江町・双葉町・大熊町・富岡町・楢葉町・広野町、いわき市】
・近江の郷祭り【滋賀県】
・東坊城のホーランヤ【奈良県橿原市東坊城町】
・山中のお改めとシシ狩り行事【島根県江津市桜江町長谷】
・池田の柴祭り【鹿児島県肝属郡錦江町池田】

 前回の答申で特別史跡に格上げされることになった埼玉古墳群を擁する行田市から「行田の足袋製造用具及び関係資料」が重要無形民俗文化財になることに。行田は江戸時代より足袋の生産が盛んな土地であり、明治に入ると機械の導入によりさらに生産が拡大。最盛期の昭和初期には全国の約80%が行田産だったといいます。現在も町のあちらこちらに足袋をストックしておく足袋蔵が見られ、また縫製工場も残っています。その行田足袋の製造技術の変異を示す製造具と関連資料の計5484点が指定対象とのこと。


今も数多くの足袋蔵が残る行田の町並み

 古くより信仰の対象であった富士山。江戸時代の中期以降は富士講による富士登山が盛んに行われていましたが、そう簡単に行ける所でもないことから、誰もが簡単に富士登山を体験できるミニチュア富士山「富士塚」が東京都や埼玉県などに数多く作られました。「志木の田子山富士塚」は明治5年(1872年)に完成したもので現状態が良く、規模も大きく優美かつ富士塚要素を良く備えるものとして重要有形民俗文化財になります。富士塚は「豊島長崎の富士塚」など4件が既に重要有形民俗文化財となっており、これで5件目です。これまでのものはすべて江戸時代に築かれたものなので、明治時代のものとして初めての指定となります。


富士塚はこういう富士山を模した築山です
(これは東京都文京区護国寺のもので、今回指定されるものではないです)

 重要無形民俗文化財では滋賀県から「近江湖南のサンヤレ踊り」と「近江のケンケト祭り長刀振り」の二つの祭礼芸能が指定されることに。サンレヤは囃子詞、ケンケトは口唱歌を意味するそうですが、いずれもユニークで楽し気なつい口に出してみたくなる響きですね。

 それにしても、通年なら2月の「重要有形民俗文化財」の答申が1月に来たのは意外でした。3月の「国宝・重要文化財(美術工芸品)」も前倒しになったりするのかな。

posted by きむら at 18:13 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

2019年11月16日

【文化審議会答申】史跡等の指定等について


 2019年11月15日(金)に開催された文化審議会で「史跡等の指定等について」の答申がありました。内容は以下の通りです。

《特別史跡》
・埼玉古墳群【埼玉県行田市】

《史跡》
・小山崎遺跡【山形県飽海郡遊佐町】
・磯浜古墳群【茨城県茨城郡大洗町】
・上野国多胡郡正倉跡【群馬県高崎市】
・神明貝塚【埼玉県春日部市】
・午王山遺跡【埼玉県和光市】
・光明山古墳【静岡県浜松市】
・永原御殿跡及び伊庭御殿跡【滋賀県野洲市・東近江市】
・安宅氏城館跡【和歌山県西牟婁郡白浜町】
・大元古墳【島根県益田市】
・讃岐国府跡【香川県坂出市】
・引田城跡【香川県東かがわ市】
・阿恵官衙遺跡【福岡県糟屋郡粕屋町】
・杵築城跡【大分県杵築市】
・鹿児島島津家墓所【鹿児島県鹿児島市・指宿市・垂水市・姶良市・薩摩郡さつま町】
・白保竿根田原洞窟遺跡【沖縄県石垣市】

《名勝》
・成田氏庭園【青森県弘前市】
・對馬氏庭園【青森県弘前市】
・須藤氏庭園(青松園)【青森県弘前市】
・哲学堂公園【東京都中野区】

《史跡の追加指定及び名称変更》

・大野原古墳群【香川県観音寺市】
 椀貸塚古墳 平塚古墳 角塚古墳 岩倉塚古墳(岩倉塚古墳を加える)
・長崎台場跡【長崎県長崎市】
 魚見岳台場跡 四郎ヶ島台場跡 女神台場跡(女神台場跡を加える)

《名勝の追加指定及び名称変更》
・多賀大社庭園【滋賀県犬上郡多賀町】
・英彦山庭園【福岡県田川郡添田町】
 旧座主御本坊庭園 旧座主御下屋庭園 旧政所坊庭園 旧亀石坊庭園 旧泉蔵坊庭園 旧顕揚坊庭園 英彦山神宮旅殿庭園

《登録記念物(遺跡関係)》
・二ヶ領用水【神奈川県川崎市】

《登録記念物(名勝地関係)》
・染谷氏庭園【千葉県柏市】
・魚津浦の蜃気楼(御旅屋跡)【富山県魚津市】
・長峯氏庭園(旧河原氏庭園)【長野県長野市】
・横山氏庭園【三重県三重郡菰野町】

 5世紀末から7世紀初頭にかけての古墳群「埼玉(さきたま)古墳」が特別史跡に格上げです。関東、いや東日本を代表する規模の古墳群であり、辛亥年の紀年名が刻まれた金錯銘鉄剣(古代日本史を研究する上で欠かせない超一級品の史料です)をはじめ出土品が国宝に指定されているなど、特別史跡の風格は十分。また埼玉県という県名は、この古墳群を中心とする埼玉郡が由来でもあります。


巨大な前方後円墳や円墳が集まる埼玉古墳群

 琵琶湖の東岸、朝鮮人街道沿いに位置する「永原御殿跡及び伊庭御殿跡」は、江戸時代初期に徳川家康・秀忠・家光が上洛する際に利用した宿泊施設と休憩施設の跡です。将軍の上洛の実態を示す遺跡としてなかなかユニークですね。そのうち伊庭御殿跡は「伊庭内湖の文化的景観」として重要文化的景観に選定されている範囲内にあり、その取材で立ち寄っています。


伊庭御殿跡では石垣や湧き水の跡などが確認できました

 名勝では弘前市にある三つの個人宅の庭園。いずれもリンゴ栽培で富を蓄えた豪農の庭で、現在も人が住んでおられるようなので一般見学はできないのかな? 「對馬氏庭園」に至ってはまだ正確な位置が特定できていません(これから頑張って調べます)。東京の哲学堂公園は明治時代に開設され、大正、昭和に拡張された公園です。近頃は近代の都市公園の名勝指定が増えてきてますね。

 今回、残念だったのは重要文化的景観の選定がなかったこと。そろそろ「勝沼のブドウ畑とワイナリー群」が来ると思っていたのですが……来年に期待です。あと、遍路道の史跡指定もなかったですね。こちらも毎回楽しみにしていたので残念です。これで今年の文化審議会答申は終わり、次は2月の「重要有形民俗文化財」、そして3月の「国宝・重要文化財(美術工芸品)」と続きます。楽しみですね。

posted by きむら at 19:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財