2023年01月11日

【文化審議会答申】史跡等の指定等について


 12月16日(金)の文化審議会において、「史跡名勝天然記念物の指定等」の答申がありました。内容は以下の通りです。

《史跡》
・鍋倉城跡【岩手県遠野市】
・旧東田川郡役所及び郡会議事堂【山形県鶴岡市】
・烏山城跡【栃木県那須烏山市】
・山王塚古墳【埼玉県川越市】
・南比企窯跡【埼玉県比企郡鳩山町】
・佐伯城跡【大分県佐伯市】
・奄美大島要塞跡【鹿児島県大島郡瀬戸内町】

《登録記念物(名勝地関係)》
・清水氏庭園【岡山県笠岡市】
・黒ヶ浜及びビシャゴ岩【大分県大分市】

《史跡の追加指定及び名称変更》
・伊予遍路道 観自在寺道 稲荷神社境内及び龍光寺境内 仏木寺道 明石寺境内 大寶道道 大寶道境内 岩屋寺道 岩屋寺境内 浄瑠璃地道 浄瑠璃寺境内 浄土寺境内 横峰寺道 横峰寺境内 三角寺奥之院道【愛媛県松山市】(浄瑠璃寺境内及び浄土寺境内を追加指定する)
・八幡浜街道 笠置峠 夜昼峠【愛媛県大洲市・八幡浜市】(夜昼峠を追加指定する)
・鹿児島城跡【鹿児島県鹿児島市】(天然記念物及び史跡の城山に史跡の追加指定を行い、鹿児島城跡に名称変更する)

《重要文化的景観の新選定》
・緒方川と緒方盆地の農村景観【大分県豊後大野市】

《重要文化的景観の追加選定及び名称変更》
・阿蘇の文化的景観 阿蘇北外輪山及び中央火口丘群の草原景観【熊本県阿蘇市】
(旧名称:阿蘇の文化的景観 阿蘇北外輪山の草原景観)

《重要文化的景観の追加選定》
・阿蘇の文化的景観 産山村の農村景観【熊本県阿蘇郡産山村】

 今回の新指定史跡で私が行ったことがあるのは「佐伯城跡」。江戸時代初頭に築かれた佐伯藩の本拠で、小高い山の上に高石垣を伴う山城が、その麓には藩主の居住域であった三の丸が位置しています。


山頂部に見事な石垣が残っていて目を見張った「佐伯城跡」

 毎回個人的に楽しみにしている四国遍路関係ですが、『伊予遍路道』に第46番札所の浄瑠璃寺境内、第49番札所の浄土寺境内が追加されました。また九州方面からの玄関口であった八幡浜から続く『八幡浜街道』に、大洲方面へ向かう夜昼峠が追加。世界遺産を目指している四国遍路の道のりはまだまだ長いですが、少しずつ指定対象が増えていって嬉しい限り。


江戸時代の札所の風情を伝える「浄土寺」
本堂は室町時代の文明14年(1482年)に築かれたもので重要文化財

 また同じく世界遺産を目指している『阿蘇の文化的景観』ですが、阿蘇市の北外輪山東側と阿蘇五岳の北側が追加され選定範囲がおよそ倍になりました。まだ範囲図を見てないですが、これで阿蘇市の草原はだいぶカバーできたのではないかと思います。産山村も北外輪山の草原が追加され、面積が増えています。……が、世界遺産になるには、まだまだ選定範囲を広げる必要があります。私は阿蘇の草原には世界遺産のポテンシャルが十分あると思ってますので、阿蘇市以外の町村も頑張っていただきたいです。

 重文景の新選定は阿蘇の東側に位置する『緒方盆地の農村景観』。実は2021年に阿蘇を取材した際、緒方にあるキャンプ場に泊まっていたのでその際に立ち寄ってました。……が、当時は重文景になるとは知らなかったので取材はしていません。また行かなければ。


緒方盆地の象徴である「原尻の滝」


阿蘇溶結凝灰岩をくりぬいた「石風呂」など独自の文化も

 ――と、今回はこんな感じでしょうか。今年も文化審議会は1月の民俗文化財、3月の登録有形文化財、6月の史跡等と続いていくことでしょう。どのような文化財が登場するのか楽しみです。

posted by きむら at 16:09 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

【文化審議会答申】国宝・重要文化財(建造物)の指定について


 更新が滞ってしまい申し訳ありません。年をまたいでしまい今更ではありますが、10月12日(金)の文化審議会において、「国宝・重要文化財(建造物)の指定について」の答申がありました。内容は以下の通りです。

【国宝】
・勝興寺 2棟 本堂、大広間及び式台(富山県高岡市)

【重要文化財】
・尻屋埼灯台 1基(青森県下北郡東通村)
・佐藤家住宅 5棟 主屋、文庫蔵、味噌蔵、米蔵及び検査所、大工小屋(秋田県大仙市)
・富岡家住宅 2棟 主屋、書院(山梨県甲府市)
・名古屋テレビ塔 1基(愛知県名古屋市)
・外村家住宅 10棟 主屋、洋室、新座敷、湯殿、文庫蔵、新蔵、道具蔵、庭蔵、漬物部屋、前蔵(滋賀県東近江市)
・経ケ岬灯台 1基、1棟 灯台、旧第一物置(京都府京丹後市)
・住吉神社 4棟 東本殿、中本殿、西本殿、拝殿(兵庫県加西市)
・角長(加納家住宅) 11棟 主屋、土蔵、穀蔵、麹室、仕込蔵、醤油蔵、樽蔵、醤油蔵(喜多)、醤油蔵(南)、角蔵、辰巳蔵(和歌山県有田郡湯浅町)
・鍋島灯台 1基(香川県坂出市)

 高岡市伏木の勝興寺がついに国宝に。寛政7年(1795年)に建立された真宗の大規模仏堂です。以前から国宝になるのではと言われていましたが、23年続いていた大修理が2021年に完了したばかりのタイミングとは。私は2019年10月に訪れましたが、まだ境内を整備中で本堂と共に国宝になる「大広間及び式台」には近づくことができませんでした。なので近いうちに再訪します。


堂々たるたたずまいの勝興寺本堂

 重文は今回も明治期の灯台の指定が進められていますね。面白いところでは昭和29年(1954年)竣工の名古屋のテレビ塔が重文に。昭和33年(1958年)の東京タワーや 昭和31年(1956年)の大阪通天閣とかも(どちらも国登録有形文化財)そう遠くないうちに重文になりそうな気がしますな。

 醤油の産地である湯浅町の角長も重文に。重要伝統的建造物群保存地区に選定されている町並みの中核を成す醤油蔵です。販売もやっており、以前町並みを訪れた時に買ったらめちゃくちゃうまかったことを覚えています。また行きたいな。


かつて醤油の搬出が行われた堀に沿って角長の蔵が並ぶ

 以上です。今回もコロナの影響か件数は少なめ、重伝建の選定がなかったのは少し残念でした。またこれも今更感ありますが12月16日の文化審議会で「史跡等の指定について」の答申がありましたので、こちらも後ほど記事を作成したいと思います。

posted by きむら at 14:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

2022年08月01日

【文化審議会答申】史跡等の指定等について


 6月17日(金)の文化審議会において、「史跡等の指定等」の答申がありました。内容は以下の通りです。

《史跡》
・鎌倉街道上道【埼玉県入間郡毛呂山町】
・夕田墳墓群【岐阜県加茂郡富加町】
・芥川城跡【大阪府高槻市】
・郡山城跡【奈良県大和郡山市】
・新宮下本町遺跡【和歌山県新宮市】
・熊本藩高瀬米蔵跡【熊本県玉名市】
・轟貝塚【熊本県宇土市】
・里官衙遺跡【大分県大分市】
・立切遺跡・横峯遺跡【鹿児島県熊毛郡中種子町・南種子町】

《登録記念物(遺跡関係)》
・徳島堰【山形県韮崎市・南アルプス市】

《登録記念物(名勝地関係)》
・岡山氏庭園(養浩園)【茨城県常陸大宮市】
・法師庭園【石川県小松市】

《史跡の追加指定及び名称変更》
・綴喜古墳群 大住車塚古墳 八幡西車塚古墳 天理山古墳 飯岡車塚古墳【京都府八幡市・京田辺市】
・讃岐遍路道 曼荼羅寺道 善通寺境内 根香寺道 志度寺境内 大窪寺道【香川県さぬき市】
・伊予遍路道 観自在寺道 稲荷神社境内及び龍光寺境内 仏木寺道 明石寺境内 大寶道道 大寶道境内 岩屋寺道 岩屋寺境内 浄瑠璃地道 横峰寺道 横峰寺境内 三角寺奥之院道【愛媛県上浮穴郡久万高原町】

 飯盛山城に続き、最初の天下人こと三好長慶の居城であった中世山城「芥川城跡」が史跡指定です。飯盛山城はハイキングコースとして整備されていますが(意外と険しい山なので登るのは結構大変でした)、芥川城は私有地らしくまだあまりカッチリとした整備は行われていないという印象です。が、尾根を断ち切った堀切や曲輪群、石積の城門など見ることができました。何より主郭からは堺と京を結ぶ一帯を見渡すことができ、まさに畿内を統治するに最適な山だと体感できます。


芥川城跡の大手石垣


芥川城跡主郭からの眺め

 大和郡山藩の政庁であった近世城郭である「郡山城跡」も史跡に。筒井順慶が築城し、その後に豊臣秀吉の弟であり右腕であった豊臣秀長が畿内統治の拠点として大々的に整備した平山城です。近年天守台が修復・整備され、極楽橋が架けられるなど史跡公園としての整備が進んでいます。天守台には地蔵や墓石などの転用石も多く、大和には良い石切り場がなく周囲の寺院から石材をかき集めた様子がうかがえます。


近年修理され展望台となった郡山城跡の天守台


天守台を築くのに利用した転用石のひとつ「逆さ地蔵」

 個人的な毎度のお楽しみ、四国遍路関係では『讃岐遍路道』に「志度寺境内」が追加、『伊予遍路道』には「大寶寺境内」「岩屋寺境内」「浄瑠璃寺道」が追加されます。このうち浄瑠璃寺道は河合集落から高野集落へ続く「千本峠」の区間です(久万高原町教育委員会に確認しました)。荒れていると聞いていたのですが、近年整備されて現在は歩くことができるようになっているようです。遍路道の史跡指定は地権者との交渉など大変な労力が必要かと思いますが、少しずつ進めていっていただければと思います。

posted by きむら at 16:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財