2018年04月18日

2018年「新指定国宝・重要文化財」展


 毎年恒例、前年度に国宝や重要文化財になった品々が東京国立博物館に集結する新指定展が4月17日より始まりましたので、上野まで足を運んでみました。特別展ではありませんので、チケットは常設展用(620円)のでOK。



 今年の新指定展は本館8室と11室に展示が分かれています。本館入ってすぐ右手の11室には仏像の類が、それ以外は二階西側の8室といった具合です。結構離れた位置にあるので、常設展と併せてゆっくり周るのが良いでしょう。



 東博の常設展は写真撮影OKなものが多いのですが、新指定展においては全て撮影NGなので気を付けましょう。係の人がかなり厳しく目を光らせており、事情を知らない外国人が他の部屋と同じように写真を撮ろうとして注意される光景を何度も見ました。カメラを持ってる場合はレンズキャップをはめておいた方が良いでしょう。

 気になるのはやはり5件の新指定国宝です。そのうち興福寺の四天王立像は残念ながらパネル展示でしたので、実物を拝観できるのは4件です。

 11室の最奥に堂々と立っているのは、三十三間堂こと蓮華王院本堂の「木造千手観音立像」。国宝になった1001躯のうち、湛慶作のものを中心に3躯が展示されています。以前に三十三間堂で見た時は密集している為か一体一体がもっと小さい印象でしたが、実際に目の当たりにしてみるとこれが意外なほど大きな像。これが1001躯も林立しているのですから凄まじいものです。

 残りの国宝3件はすべて二階の8室に展示されています。「紙本著色日月四季山水図」は荒波や四季の山々に太陽と月が浮かぶ室町時代の屏風絵で、ダイナミックな画風に細やかな彩色が独特の迫力をもたらしています。「紺紙金字大宝積経巻第三十二(高麗国金字大蔵経)」は世界に現存する最古の高麗写経で、南北朝時代以前に日本に伝来。美しい藍染の紺色紙に、これまた美しい金字の経文が記されています。

 個人的に最も見たかったのが、琵琶湖北岸の菅浦に伝わる「菅浦文書(千二百八十一通)」および「菅浦与大浦下庄堺絵図」です。菅浦は中世より独自の掟で自治を行ってきた集落で、「菅浦文書」はその中世から近世の記録……なのですが、展示は一枚だけで「ふーん」といった感じ。しかしながら、並んで展示してある「菅浦与大浦下庄堺絵図」は見た目に分かりやすく必見です。菅浦に隣接する大浦との境界争いの際に作られた絵図なのですが、肝心の集落よりも南に聳える竹生島が非常に大きく立派に描かれており、竹生島の管轄下にあった菅浦集落の実態がよく分かります。



 というワケで2018年新指定展、常設展と共に堪能してきました。改めて思うのが、たった620円で国宝や重文を含む膨大な量の文化財を見ることができる東京国立博物館は実に素晴らしい施設であるということ。新指定展は5月6日までやっていますので、ゴールデンウィークにでもぜひ足を運んでみてください。本館北側の庭園も5月20日まで開放されていますので、まさに東博を満喫するには今、ですな。

posted by きむら at 14:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

2018年03月10日

国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定


3月9日(金)に開催された文化審議会で「国宝・重要文化財(美術工芸品)の指定について」の答申がありました(→文化庁サイト)。内容は以下の通りです。

【国宝(美術工芸品)の指定】
・紙本著色日月四季山水図[金剛寺/大阪府河内長野市]
・木造千手観音立像(蓮華王院本堂安置)[妙法院/京都府京都市]
・木造四天王立像[宗教法人興福寺/奈良県奈良市]
・紺紙金字大宝 積経 巻第三十二(高麗国金字大蔵経)[国立文化財機構/東京都台東区]
・菅浦文書(千二百八十一通),菅浦与大浦下庄堺絵図[須賀神社/滋賀県長浜市]

【重要文化財(美術工芸品)の指定】
多いので省略

今回は5件のも文化財が国宝になります。個人的に気になるものをかいつまんでご紹介。

中でも著名なのは、三十三間堂として知られる蓮華王院本堂の「木造千手観音立像」。建物自体は既に国宝ですが、今回は堂内に安置されている平安時代および鎌倉時代の千手観音菩薩像が国宝になります。ズラリと並ぶ1001躯の観音像は迫力満点で、むしろ今まで国宝でなかったのが不思議なほど。45年にもおよぶ保存修理が完了したとのことで、それを契機として重要文化財から国宝に昇格です。

数多くの国宝を有する奈良興福寺。長らく中金堂に安置されていた「木造四天王立像」は鎌倉時代の仏像で、本来は南円堂の像として作られたことが判明しています。そこで再び南円堂に戻されることとなり、それを契機として南円堂に祀られている他の国宝仏像と肩を並べるべく国宝に。

「菅浦文書」及び「菅浦与大浦下庄堺絵図」は、琵琶湖の北岸に突き出た葛籠尾崎に位置する菅浦集落の動向を記した鎌倉時代から江戸時代にかけての記録です。菅浦は中世の荘園にルーツを持つ集落で、「惣(そう)」と呼ばれる独自の自治形態により治められてきました。現在も昔からの集落形態を維持していることから、集落全体が「菅浦の湖岸集落景観」として国の重要文化的景観に選定されています。その菅浦に伝わる一連の文書および絵図は、中世村落史研究上極めて重要であることから国宝に指定されます。

重要文化財の指定では、様々な野菜で描かれたユニークな涅槃図である「紙本墨画果蔬涅槃図 伊藤若冲筆」や、特別史跡であるキトラ古墳の壁画及び出土品など気になるものも多々あります。特にキトラ古墳壁画は高松塚古墳の壁画と同様、今後国宝になりそうな感じがしますね。

次回の文化財指定は5月中旬(18日(金)かな?)、国宝・重要文化財の指定(建造物)と重要伝統的建造物群保存地区の選定です。楽しみです。

posted by きむら at 14:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

2018年01月22日

重要無形民俗文化財の指定等


1月19日(金)に開催された文化審議会で「重要無形民俗文化財の指定等」の答申がありました(→文化庁サイト)。内容は以下の通りです。

【重要無形民俗文化財の指定】
・松前神楽(北海道函館市ほか)
・秩父吉田の龍勢(埼玉県秩父市)
・村上祭の屋台行事(新潟県村上市)
・浦佐毘沙門堂の裸押合(新潟県南魚沼市)
・輪島の海女漁の技術(石川県輪島市)
・勝手神社の神事踊(三重県伊賀市)

【登録有形民俗文化財の登録】
・箱根細工の製作用具及び製品(神奈川県足柄下郡箱根町)
・琵琶湖の漁撈用具及び船大工用具(滋賀県)

【記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の選択】
・霞ケ浦の帆引網漁の技術(茨城県土浦市ほか)
・尾山の七夕流し(富山県黒部市)
・中陣のニブ流し(富山県黒部市)
・四国山地の発酵茶製造技術(四国地方)
・久礼八幡宮の御神穀祭(高知県高岡郡中土佐町)
・吉井のシシウチ行事(長崎県佐世保市)
・種子島の盆踊(鹿児島県西之表市、熊毛郡南種子町)

「秩父吉田の龍勢」は、五穀豊穣や天下泰平を祈願して打ち上げる煙火で、いわばデカいロケット花火。かなり前ですが、デイリーポータルZでも編集長の林さんが取り上げています(参考記事→「さいたまロケット祭り&ドラゴン祭り」)。

秩父といえば、遥か昔に海の底だったこともあり、地質が面白ことでも有名です。「長瀞の岩畳」や「取方の大露頭」など6つの露頭と9件の化石標本が天然記念物に指定されています。広範囲なので公共交通で周るのは難しいですが、いつかバイクで行ってみようと思っています。

「輪島の海女漁の技術」は、「鳥羽・志摩の海女漁の技術」に続き2例目の海女漁の無形文化財指定です。日本の海女漁の技術をユネスコの世界無形文化遺産に推薦する動きがあるようですし、それを目指しての文化財指定ってな感じでしょうか。

個人的に気になるのは「四国山地の発酵茶製造技術」。緑茶は茶葉を発酵させないお茶ですが、ウーロン茶や紅茶のように茶葉を発酵させるお茶も日本にあったのですね。特に石鎚黒茶はカビを付けるとのことで、独特の香りと酸味があるらしいですが、味の想像がつきません。

さて、次回の文化財指定はおそらく3月下旬(23日(金)かな?)、国宝・重要文化財の指定(美術工芸品)と登録有形文化財(建造物)です。楽しみですね。


posted by きむら at 16:28 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財