2024年12月31日

【文化審議会答申】史跡名勝天然記念物の指定等について


 12月20日(金)の文化審議会における、「史跡名勝天然記念物の指定等」の答申についてです。内容は以下の通りです。

《史跡》
・松倉城【岐阜県高山市】
・前畑遺跡【福岡県筑紫野市】
・島原城跡【長崎県島原市】
・腰高遺跡【長崎県対馬市】
・臼杵城跡【大分県臼杵市】
・与論城跡【鹿児島県大島郡与論町】

《名勝》
・納池【大分県竹田市】

《登録記念物(名勝地関係)》
・明神山(送迎山)【奈良県北葛城郡王子町】
・丸井氏庭園【鳥取県倉吉市】
・上林の風穴【愛媛県東温市】
・穴井戸観音【大分県豊後高田市】

《史跡の追加指定及び名称変更》
・讃岐遍路道 曼荼羅寺道 甲山寺境内 善通寺境内 根香寺道 志度寺境内 大窪寺道(甲山寺境内【香川県善通寺市】を追加指定する)
・土佐遍路道 最御崎寺道 金剛頂寺道 金剛頂寺境内 神峯寺道 竹林寺道 禅師峰寺道 清瀧寺境内 青龍寺道 金剛福寺道 観自在寺道(最御崎寺道 金剛頂寺道観 金剛頂寺境内 神峯寺道【高知県室戸市】、金剛福寺道【高知県土佐清水市】を追加指定する)

 前回の史跡答申と同様、今回の史跡指定も文化庁が公表している「指定相当の埋蔵文化財リスト」に記載されているものがほとんどでした。今後もリストに記載されている遺跡の史跡指定が進んでいくと思われます。

 このリストは極めて重要な近代化遺産である「高輪築堤」を全面保存できなかった反省を踏まえて文化庁が作成したものですが、残念ながら高輪築堤と同様に我が国の鉄道の黎明期を示す「旧門司駅舎跡」の遺構が北九州市によって破壊されてしまいました。そのことについてどう考えているのか、文化庁に聞いてみたいです。

 さて、今回は城跡の史跡指定が目立ちますね。島原半島の東部に位置する島原城跡は立派な石垣が特徴の近世城郭です。4万石の島原藩にしては立派過ぎる規模で、その建設費を担うため領民に重税を課し、それが島原の乱の切っ掛けになったとも言います。周囲を有力な外様大名に囲まれた島原藩は、それらを抑え込むための巨城が必要だったという事情もあるようです。実際、島原の乱の一揆勢を撃退していますし、堅城であったことは間違いありません。


シンプルな縄張りながらも堅牢な島原城

 大分県の臼杵城跡は戦国時代に大友宗麟が築き、織豊時代から近世にかけて石垣で拡張された城跡です。現在は市街地と陸続きですが当初は海に囲まれた島で、主郭が西側から東側に変わるなど城郭の変遷が追える点も評価されています。


現在の主要な登城口である今橋口から見る臼杵城

 毎回おなじみの四国遍路関係ですが、『讃岐遍路道』に第74番札所の「甲山寺境内」、『土佐遍路道』に第24番札所の最御崎寺へと上る遍路道が「最御崎寺道」として、第26番札所の金剛頂寺へと上る遍路道「金剛頂寺道」とその境内、金剛頂寺から下りる遍路道が「神峯寺道」として、第38番札所金剛福寺と第39番札所延光寺の分岐点にあたる真念庵とその前後の遍路道が「金剛福寺道」として追加されます。しばらくご無沙汰だった土佐遍路道が一気にきた感じですね。


石仏が並ぶ遍路道と真念庵

 今回はこんなところです。なんとか年内に更新することができました。来年はもう少しスピード感を持ってサイトの更新に勤しみたいです。今年も一年ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

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2024年10月19日

【文化審議会答申】国宝・重要文化財(建造物)の指定について


 10月18日(金)に開催された文化審議会において、「国宝・重要文化財(建造物)の指定」の答申がありました。内容は以下の通りです。

《国宝》新指定
・萬福寺 3棟 大雄宝殿、法堂、天王殿【京都府宇治市】

《重要文化財》新指定
・總持寺祖院 16棟 大祖堂、仏殿、山門、鐘鼓楼及び回廊、放光堂、慧心廊、玄風廊、伝燈院御霊屋、伝燈院唐門、慈雲閣観音堂、白山社本殿、白山蔵、経蔵、三樹松関、裏門【石川県輪島市】
・旧村井家別邸(長楽館) 1棟【京都府京都市】
・金剛峯寺 9棟 御影堂、西塔、山王院拝殿、山王院鐘楼、准胝堂、宝蔵、大会堂、愛染堂、三昧堂【和歌山県伊都郡高野町】
・金剛峯寺金堂及び根本大塔 2棟【和歌山県伊都郡高野町】
・瀬戸内海歴史民俗資料館 1棟【和歌山県和歌山市】
・鞍埼灯台 1基【宮崎県日南市】

《重要文化財》追加指定
・妙義神社 4棟、1基 随神門、廻廊、銅鳥居、御殿、社務所【群馬県富岡市】

 まずは京都府の宇治市にある黄檗宗の大本山「萬福寺」の3棟が国宝に。日本にインゲンマメを伝えたと言われる隠元が17世紀半ばに開いた寺院で、明の建築様式と日本の建築様式が融合した統一感ある伽藍景観が特徴です。境内のほぼ全体というべき23棟が重要文化財に指定されていましたが、そのうち最も主要な建造物である大雄宝殿、法堂、天王殿が国宝に昇格します。


全体が中国風に整えられた、実に印象的な寺院である

 輪島市の門前町にある總持寺祖院の堂宇群が重要文化財になります。曹洞宗大本山の總持寺が明治時代に横浜へ移転した跡地に建てられた寺院です。2007年の能登半島地震で被災し、2021年に完全復興したなかで今年正月の能登半島地震で再び多大な被害を受けました。今回の重文指定は被災前から準備が進められていたとのことですが、重文に指定されたことで国の補助が得られるようになりましたので、それが再復興の道筋になるのではないでしょうか。

 弘法大師空海が開いた金剛峯寺の壇上伽藍に建ち並ぶ堂宇も重文に。指定は「金剛峯寺 9棟」と「金剛峯寺金堂及び根本大塔 2棟」の2件に分かれていますが、これは前者が江戸時代の木造、後者が昭和初期の鉄筋鉄骨コンクリート及び木造と時代区分・工法が違うためです。金剛峯寺は今年の1月に本坊も重文に指定されましたし、これで金剛峯寺のほぼ全体の建造物が重文になった形となります。


壇上伽藍の中核である根本大塔は昭和12年に再建された

 瀬戸内海を見渡す五色台にある瀬戸内海歴史民俗資料館も重文に。昭和48年(1973年)の建造で、1970年代の建築として初めての指定、最も若い重文になります。近代灯台の重文指定の流れとしては、今回は宮崎県日南市の大島に建つ鞍埼灯台が重文になります。

 ――という感じでした。件数こそ少な目ですが、粒ぞろいだと思います。重伝建の選定がないのは少し残念でした。

posted by きむら at 13:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

2024年08月08日

【文化審議会答申】史跡名勝天然記念物の指定等について


 出遅れましたが、6月24日(月)の文化審議会における、「史跡名勝天然記念物の指定等」の答申についてです。内容は以下の通りです。

《特別史跡》
・福井洞窟【長崎県佐世保市】

《史跡》
・黒山の昔穴遺跡群【岩手県九戸郡九戸村】
・西方城跡【栃木県栃木市】
・上野国分尼寺跡【群馬県高崎市】
・デーノタメ遺跡【埼玉県北本市】
・坊の塚古墳【岐阜県各務原市】
・東氏館跡及び篠脇城跡【岐阜県郡上市】
・高尾山古墳【静岡県沼津市】
・物集女城跡【京都府向日市】
・平城貝塚【愛媛県南宇和郡愛南町】
・六郷山【大分県国東市・豊後高田市】

《名勝》
・鳥潟会館庭園【秋田県大館市】
・西氏庭園【石川県金沢市】

《登録記念物(遺跡関係)》
・菊池海荘宅跡【和歌山県有田郡湯浅町】

《登録記念物(名勝地関係)》
・海津東山温泉向瀧庭園【福島県会津若松市】
・日本万国博覧会記念公園日本庭園【大阪府吹田市】

《重要文化的景観》
・大谷の奇岩群と採石産業の文化的景観【栃木県宇都宮市】

《史跡の追加指定及び名称変更》
・古市古墳群 古室山古墳 赤面山古墳 大鳥塚古墳 助太山古墳 鍋塚古墳 城山古墳 峯ヶ塚古墳 墓山古墳 野中古墳 応神天皇陵古墳外濠外堤 鉢塚古墳 はざみ山古墳 青山古墳 蕃所山古墳 稲荷塚古墳 東山古墳 割塚古墳 唐櫃山古墳 松川塚古墳 浄元寺山古墳 白鳥陵古墳周堤 仲姫命陵古墳周堤 安閑天皇陵古墳周堤(安閑天皇陵古墳周堤【大阪府羽曳野市】を追加指定する)
・阿波遍路道 大日寺境内 地蔵寺境内 切幡寺境内 焼山寺境内 一宮道 常楽寺境内 恩山寺道 立江寺道 鶴林寺道 鶴林寺境内 太龍寺道 かも道 太龍寺境内 いわや道 平等寺道 平等寺境内 雲辺寺道(切幡寺境内【徳島県阿波市】を追加指定する)
・伊予遍路道 観自在寺道 稲荷神社境内及び龍光寺境内 仏木寺道 明石寺道 明石寺境内 大寶道道 大寶道境内 岩屋寺道 岩屋寺境内 浄瑠璃地道 浄瑠璃寺境内 八坂寺境内 浄土寺境内 繁多寺境内 横峰寺道 横峰寺境内 三角寺奥之院道(繁多寺境内【愛媛県松山市】を追加指定する)
・田主丸古墳群 田主丸大塚古墳 寺徳古墳 中原狐塚古墳 西館古墳 益生田古墳群(益生田古墳群【福岡県久留米市】を追加指定する)
・大島畠田遺跡 附 郡元西原遺跡(附として郡元西原遺跡【宮崎県都城市】を追加指定する)

 今回、史跡に指定されたものの多くは2023年に文化庁が公表した「指定相当の埋蔵文化財リスト」に記載されている遺跡です。これは極めて重要な近代化遺産である「高輪築堤」を全面保存できなかった反省を踏まえて作成されたリストで、「これに載せた遺跡は重要だから開発すんじゃねーぞ」とにらみを利かせるというか、まぁ、単純に史跡の候補地と言えるんじゃないかと思います。リストは定期的に更新されるようで、今後もこのリストに掲載されている遺跡が史跡に指定されていくことでしょう。

 さて、今回新たに「福井洞窟」が特別史跡になりました。佐世保と平戸の中間あたりに位置する、旧石器時代から縄文時代への変遷を示す岩陰遺跡です。2017年の加曾利貝塚に続く、64件目の特別史跡になります。私は2018年に「潜伏キリシタン関連遺跡」の取材途中に立ち寄りましたが、現在は福井洞窟ミュージアムもできたようですし、すぐ近くにある直谷城跡も凄いと聞きますし、また行かなきゃですね。


神社が祀られている「福井遺跡」の岩陰

 ひそかに毎回楽しみにしている四国遍路関係では、『阿波遍路道』に第10番札所の「切幡寺境内」、『伊予遍路道』に第50番札所の「繁多寺境内」が追加されました。遍路道の追加がないのはちょっと残念ですが、札所の指定が着実に増えていって何よりです。


長い石段を登ってたどりつく「切幡寺」

 重要文化的景観では「大谷の奇岩群と採石産業の文化的景観」が選定されました。宇都宮の郊外に位置する大谷地区は大谷石の産地であり、特別史跡および重要文化財の「大谷磨崖仏」や、名勝の「大谷の奇岩群」など大谷石由来の文化財があります。それらを含め、採石所や大谷石の建造物が残る集落などを包括する範囲が重文景になります。


大谷街道沿いに見られる大谷石造の石材店

 今回はこんなところでしょうか。閑古鳥旅行社を更新するため「福井洞窟」の取材もしなきゃですし、国東半島の「六郷山」の寺院群も気になりますし、できるだけ早いうちに九州へ行きたいんですが……いろいろあって旅行はしばらく無理そうな今日この頃です。

posted by きむら at 13:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財