2019年11月16日

【文化審議会答申】史跡等の指定等について


 2019年11月15日(金)に開催された文化審議会で「史跡等の指定等について」の答申がありました。内容は以下の通りです。

《特別史跡》
・埼玉古墳群【埼玉県行田市】

《史跡》
・小山崎遺跡【山形県飽海郡遊佐町】
・磯浜古墳群【茨城県茨城郡大洗町】
・上野国多胡郡正倉跡【群馬県高崎市】
・神明貝塚【埼玉県春日部市】
・午王山遺跡【埼玉県和光市】
・光明山古墳【静岡県浜松市】
・永原御殿跡及び伊庭御殿跡【滋賀県野洲市・東近江市】
・安宅氏城館跡【和歌山県西牟婁郡白浜町】
・大元古墳【島根県益田市】
・讃岐国府跡【香川県坂出市】
・引田城跡【香川県東かがわ市】
・阿恵官衙遺跡【福岡県糟屋郡粕屋町】
・杵築城跡【大分県杵築市】
・鹿児島島津家墓所【鹿児島県鹿児島市・指宿市・垂水市・姶良市・薩摩郡さつま町】
・白保竿根田原洞窟遺跡【沖縄県石垣市】

《名勝》
・成田氏庭園【青森県弘前市】
・對馬氏庭園【青森県弘前市】
・須藤氏庭園(青松園)【青森県弘前市】
・哲学堂公園【東京都中野区】

《史跡の追加指定及び名称変更》

・大野原古墳群【香川県観音寺市】
 椀貸塚古墳 平塚古墳 角塚古墳 岩倉塚古墳(岩倉塚古墳を加える)
・長崎台場跡【長崎県長崎市】
 魚見岳台場跡 四郎ヶ島台場跡 女神台場跡(女神台場跡を加える)

《名勝の追加指定及び名称変更》
・多賀大社庭園【滋賀県犬上郡多賀町】
・英彦山庭園【福岡県田川郡添田町】
 旧座主御本坊庭園 旧座主御下屋庭園 旧政所坊庭園 旧亀石坊庭園 旧泉蔵坊庭園 旧顕揚坊庭園 英彦山神宮旅殿庭園

《登録記念物(遺跡関係)》
・二ヶ領用水【神奈川県川崎市】

《登録記念物(名勝地関係)》
・染谷氏庭園【千葉県柏市】
・魚津浦の蜃気楼(御旅屋跡)【富山県魚津市】
・長峯氏庭園(旧河原氏庭園)【長野県長野市】
・横山氏庭園【三重県三重郡菰野町】

 5世紀末から7世紀初頭にかけての古墳群「埼玉(さきたま)古墳」が特別史跡に格上げです。関東、いや東日本を代表する規模の古墳群であり、辛亥年の紀年名が刻まれた金錯銘鉄剣(古代日本史を研究する上で欠かせない超一級品の史料です)をはじめ出土品が国宝に指定されているなど、特別史跡の風格は十分。また埼玉県という県名は、この古墳群を中心とする埼玉郡が由来でもあります。


巨大な前方後円墳や円墳が集まる埼玉古墳群

 琵琶湖の東岸、朝鮮人街道沿いに位置する「永原御殿跡及び伊庭御殿跡」は、江戸時代初期に徳川家康・秀忠・家光が上洛する際に利用した宿泊施設と休憩施設の跡です。将軍の上洛の実態を示す遺跡としてなかなかユニークですね。そのうち伊庭御殿跡は「伊庭内湖の文化的景観」として重要文化的景観に選定されている範囲内にあり、その取材で立ち寄っています。


伊庭御殿跡では石垣や湧き水の跡などが確認できました

 名勝では弘前市にある三つの個人宅の庭園。いずれもリンゴ栽培で富を蓄えた豪農の庭で、現在も人が住んでおられるようなので一般見学はできないのかな? 「對馬氏庭園」に至ってはまだ正確な位置が特定できていません(これから頑張って調べます)。東京の哲学堂公園は明治時代に開設され、大正、昭和に拡張された公園です。近頃は近代の都市公園の名勝指定が増えてきてますね。

 今回、残念だったのは重要文化的景観の選定がなかったこと。そろそろ「勝沼のブドウ畑とワイナリー群」が来ると思っていたのですが……来年に期待です。あと、遍路道の史跡指定もなかったですね。こちらも毎回楽しみにしていたので残念です。これで今年の文化審議会答申は終わり、次は2月の「重要有形民俗文化財」、そして3月の「国宝・重要文化財(美術工芸品)」と続きます。楽しみですね。

posted by きむら at 19:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

2019年11月01日

【文化審議会答申】重要文化財(建造物)の指定および重伝建の選定について


 うっかりもう先月になってしまいましたが、私が北陸を旅行していた最中の10月18日(金)に開催された文化審議会において、「重要文化財(建造物)の指定について」および「重要伝統的建造物群保存地区の選定について」の答申がありました。内容は以下の通りです。

【重要文化財】
・塩原家住宅 主屋、裏蔵、稲荷社、土地(群馬県前橋市)
・水準原点 原点、掩蓋(東京都千代田区)
・旧島津家本邸 本館、事務所(東京都品川区)
・神奈川県庁舎(神奈川県横浜市)
・金剛寺 五仏堂、薬師堂、閼伽井屋、護摩堂、法具蔵、求聞持堂、開山堂、宝蔵、経蔵、弁財天社本殿、八大龍王善女龍王社本殿、天照皇大神社本殿、築地塀(2所)、鎮守水分明神社本殿、鎮守丹生高野明神社本殿、鎮守社拝殿、鎮守社鐘楼、旧理趣院表門、旧真福院表門、南門、総門(大阪府河内長野市)
・徳善家住宅(徳島県三次市)

【重要文化財(追加指定)】
・喜多家住宅 作業場、酒蔵、前蔵、貯蔵庫(石川県野々市市)
・摩尼院 表門、築地塀(大阪府河内長野市)
・木村家住宅 隠居屋、土地(徳島県三次市)

【重要伝統的建造物群保存地区】
・たつの市龍野(兵庫県たつの市)
・南さつま市加世田麓(鹿児島県南さつま市)

 国会議事堂の前、憲政記念館の庭園にある「水準原点」が重文に。日本国土の標高を測った水準測量の原点です。お恥ずかしながら、国会議事堂の前にそのようなモノがあるとは知りませんでした。水準点は掩蓋に覆われており普段は見ることができませんが、年に一度測量の日あたりに一般公開があるらしいので、来年行ってみたいと思います。

 横浜三塔のうち「キングの塔」こと昭和3年(1928年)に建てられた神奈川県庁舎がついに重文に。鉄骨鉄筋コンクリートの近代建築に和風の装飾を施した、いわゆる帝冠様式の代表格です。同様の帝冠様式である愛知県庁舎や名古屋市庁舎、東京国立博物館本館は既に重文なので、ようやくかって感じです。


どっしりと威厳あるたたずまいの「神奈川県庁舎」

 大阪府河内長野市の大寺院「金剛寺」は金堂や御影堂、楼門など主要な堂宇は既に重文ですが、その脇を固める諸堂もまとめて重文になります。……っていうか、なぜか新指定扱いなんですよね、コレ。既指定のお堂はそれぞれ個別の重文指定だからでしょうか。改めて「金剛寺」のくくりでまとめて、追加指定扱いにすれば良いのにと思うのですが。なぜそうしないのか、謎だ。

 重伝建の新選定は薄口醤油の醸造で栄えた「龍野」と、薩摩藩の外城であった「加世田麓」。龍野は前々から動きがあったので、やっぱり来たかという感じですね。広島県の宮島も重伝建に向けて動いていたのでそろそろかと思ったのですが、こちらは今回じゃなかったみたいで。次回かな?

 次の文化財答申は、おそらく11月15日(金)の史跡等指定ですね。以前より動きがあった「勝沼のブドウ畑とワイナリー群」の重要文化的景観の選定はくるかな? 楽しみです。

posted by きむら at 16:39 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

2019年06月22日

【文化審議会答申】史跡等の指定等について


 2018年6月21日(金)に開催された文化審議会で「史跡等の指定等について」の答申がありました(→文化庁サイト)。内容は以下の通りです。

【史跡】
・伊達氏梁川遺跡群(福島県伊達市)
・岩櫃城跡(群馬県吾妻郡東吾妻町)
・下総佐倉油田牧跡(千葉県香取市)
・墨古沢遺跡(千葉県印旛郡酒々井町)
・本ノ木・田沢遺跡群 本ノ木遺跡 田沢遺跡 壬遺跡(新潟県中魚沼郡津南町・十日町市)
・水軒堤防(和歌山県和歌山市)
・若杉山辰砂採掘遺跡(徳島県阿南市)
・紫雲出山遺跡(香川県三豊市)

【名勝】
・西山氏庭園(青龍庭)(大阪府豊中市)
・満濃池(香川県仲多度郡まんのう町)

【天然記念物】
・青野山(島根県鹿足郡津和野町)

【登録記念物】
・旧林氏庭園(愛知県一宮市)
・八束氏庭園(愛媛県松山市)
・平田氏庭園(大分県中津市)

【重要文化的景観】
・今帰仁今泊のフクギ屋敷林と集落景観(沖縄県国頭郡今帰仁村)

 真田氏の本拠地である上田城と、北関東の重要拠点である沼田城を繋ぐ交通の要衝に位置する群馬県の「岩櫃城跡」。四月に続100名城巡りで訪れたばかりなので記憶に新しいです。岩櫃山の中腹に築かれている山城で、主郭を中心に竪堀や横堀が巡らされています。城自体も素晴らしいのですが、岩櫃城へと至る未舗装の山道がまた雰囲気満点で良かったです。ここはぜひ、群馬原町駅から徒歩での登城がオススメです。


岩櫃城の主郭から伸びるダイナミックな竪堀

 徳島県の山間、四国遍路第21番札所太龍寺へ登る遍路道沿いに位置する「若杉山辰砂採掘遺跡」は、弥生時代後期から古墳時代前期にかけての辰砂の採掘場跡です。辰砂から作られる顔料の朱は、古代の葬送儀礼に不可欠なもので、権力の象徴とされていました。露頭掘りの跡のみならず坑道も発見されており、古代日本における採掘技術の高さに驚かされます。四国遍路をやっていた時に説明板を見ましたが、木々に覆われた山の中ということもあり肝心の採掘跡は分かりませんでした。今後は整備されたりするのかな?


遍路道から見た若杉山遺跡。採掘跡はちょっと分からない

 遍路道の追加指定もありました。「阿波遍路道」では第4番札所大日寺の境内、第5番札所地蔵寺の境内を追加、「伊予遍路道」では第43番札所明石寺境内と、明石寺から宇和の町へ抜ける山道が大寶寺道として追加されます。遍路道のみならず、札所の指定もちょくちょく増えてきました。……が、まだまだごく一部。四国遍路全体の十分な保護が完了するまでの道のりは長いですね。地道に指定を続けていってもらいたいです。


明石寺から続く遍路道に残る切通し

 遍路繋がりでは大宝年間(701〜704年)に築かれ、その後の弘仁12年(812年)に弘法大師空海が修復したとされる「満濃池」が名勝に指定されます。古代に遡る日本最古級のダム湖として有名ですね。古来より著名な名所としての風致景観が評価され、ため池として初の名勝に。


今昔物語に「まるで海のよう」と記された満濃池

 重要文化的景観の選定は「今帰仁今泊のフクギ屋敷林と集落景観」の一件。先日の沖縄旅行の際に立ち寄っており、実にタイムリーでした。今帰仁城の下にある今泊は、直線状に通された路地にフクギの屋敷林が並び立ち、沖縄の伝統家屋が数多く残る集落です。その独特な風情に重要伝統的建造物群保存地区になってもおかしくないと思ってましたが、まさか重要文化的景観でくるとは。選定範囲は今泊集落のみならず、国指定史跡の今帰仁城やその側の旧集落、国指定名勝「アマミクヌムイ」の一部であるクバの御嶽なども包括するようです。


今泊集落のフクギ並木と伝統家屋

 さてはて、今年も6月末から7月頭にかけて世界遺産委員会が開催されます。日本が推薦した「百舌鳥・古市古墳群」は既にICOMOSから記載勧告を受けており、問題なくその通りの決議になることでしょう。個人的には記載延期や情報照会の勧告を受けた案件がどうなるのか、今年も注視したいと思います。

posted by きむら at 14:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財