2006年11月19日

隅田川橋梁群のふところにもぐる


突然だが、私は文化財を見に行くことが好きだ。古墳から神社仏閣まで幅広くイケるクチである。特に最近は、近代の産業遺産に凝っている。

先日、隅田川には昭和初期に架けられた橋梁が数多く残っていると知り、それらを見るために自転車を走らせ隅田川へとでかけた。何気なく訪れた隅田川であったが、私は思わぬことに感動することとなった。



隅田川には数多くの鉄橋がかけられているが、それらは様々なタイプのものを見ることができる。同じデザインの橋は一つたりとも無いのだ。これは、関東大震災で燃え落ちた木造の橋を鉄橋に架け替えるにあたり、長く後世に残すことを考えてあえて画一的なものにしなかったのだという。

隅田川橋梁-白髭橋1
昭和6年建造の白髭橋
ゲルバー式タイドアーチ鋼トラスという舌噛みそうな様式

隅田川橋梁-白髭橋2
これはこれで美しい構造体ではある

隅田川の両岸の一部には、隅田川テラスと呼ばれる遊歩道がある。そこに下りれば隅田川をすぐ側で見ることができるという粋なスペースだ(全開通していない現在、青テントの密集地帯となっているがそれはご愛嬌)。隅田川テラスは堤防よりさらに下に作られているため、それを利用することで隅田川に架けられた橋の下をくぐることもできる。

とりあえず、テラスに下りて橋のふところへもぐってみた。そこは、めくるめく陰と光の世界。



隅田川橋梁-蔵前橋1
昭和2年建造の蔵前橋。上路式ソリッドリブアーチ橋

隅田川橋梁-蔵前橋2
下から見る蔵前橋

……なんだろう、この胸の高まりは。橋の下に入った瞬間に感じる陰の暗さ。水面に反射して穏やかに差し込む光。まるで別の世界に入り込んだかのように周囲の喧騒は遮断され、その橋下の空間は自分だけのものになる。



隅田川橋梁-両国橋1
昭和7年建造の両国橋。ゲルバー式鋼鈑桁橋

隅田川橋梁-両国橋2
鉄骨の色は渋いグリーン

手前から奥に伸びてゆく鉄筋。それを補強するため横に渡される鉄筋。この薄暗い橋の下ではそれらがことさら美しく見える気がする。普段は目に見えないながらも、俺はここでいつでも橋を支えているんだぜ!というような鉄筋たちの声が聞こえるような気がする。



隅田川橋梁-駒形橋1
昭和2年建造の駒形橋
中央は中路式、両端は上路式のソリッドリブアーチ橋

隅田川橋梁-駒形橋2
テラスから見れるのは上路式アーチ部分。より閉鎖感がある

普段は単なる景色として何気なく流している橋。そんな橋たちのふところに飛び込むことで、橋と一対一で対峙する。「あんたも大変だな、毎日踏まれつづけて」「いや、自分それが仕事ですから」……なんだか泣けてきた。



隅田川橋梁-総武線隅田川橋梁1
昭和7年建造のJR総武線隅田川橋梁。下路式ランガー桁橋

隅田川橋梁-総武線隅田川橋梁2
より開放感のある橋下。線路が見える

次の橋はどんな表情を見せてくれるのだろう。急いで自転車のペダルをこぐ。もはや一番初めの目的であった、文化財としての橋見学などどうでもよくなってきた。橋の下が見たい!もっと、橋の下を!橋の下が見たい!美しい鉄骨たちを見たいんだ!



自分の新たな境地が見えた今回の隅田川橋梁群見学。外側から見る鉄橋とは一味違う、橋たちの別の表情を見ることができた。それは同級生の家へ遊びに行って始めて分かる、「え、キミってそんな人だったの?」というような、意外な驚きだ。もし、家庭事情を知りたい鉄橋に出会ったら、とりあえずそのふところへもぐってみるといいかもしれない。

隅田川橋梁-厩橋
隅田川の橋は、普通に見学しても楽しいよ


posted by きむら at 00:41 | Comment(0) | TrackBack(0) | コネタ
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/32253162
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。

この記事へのトラックバック