2024年10月19日

【文化審議会答申】国宝・重要文化財(建造物)の指定について


 10月18日(金)に開催された文化審議会において、「国宝・重要文化財(建造物)の指定」の答申がありました。内容は以下の通りです。

《国宝》新指定
・萬福寺 3棟 大雄宝殿、法堂、天王殿【京都府宇治市】

《重要文化財》新指定
・總持寺祖院 16棟 大祖堂、仏殿、山門、鐘鼓楼及び回廊、放光堂、慧心廊、玄風廊、伝燈院御霊屋、伝燈院唐門、慈雲閣観音堂、白山社本殿、白山蔵、経蔵、三樹松関、裏門【石川県輪島市】
・旧村井家別邸(長楽館) 1棟【京都府京都市】
・金剛峯寺 9棟 御影堂、西塔、山王院拝殿、山王院鐘楼、准胝堂、宝蔵、大会堂、愛染堂、三昧堂【和歌山県伊都郡高野町】
・金剛峯寺金堂及び根本大塔 2棟【和歌山県伊都郡高野町】
・瀬戸内海歴史民俗資料館 1棟【和歌山県和歌山市】
・鞍埼灯台 1基【宮崎県日南市】

《重要文化財》追加指定
・妙義神社 4棟、1基 随神門、廻廊、銅鳥居、御殿、社務所【群馬県富岡市】

 まずは京都府の宇治市にある黄檗宗の大本山「萬福寺」の3棟が国宝に。日本にインゲンマメを伝えたと言われる隠元が17世紀半ばに開いた寺院で、明の建築様式と日本の建築様式が融合した統一感ある伽藍景観が特徴です。境内のほぼ全体というべき23棟が重要文化財に指定されていましたが、そのうち最も主要な建造物である大雄宝殿、法堂、天王殿が国宝に昇格します。


全体が中国風に整えられた、実に印象的な寺院である

 輪島市の門前町にある總持寺祖院の堂宇群が重要文化財になります。曹洞宗大本山の總持寺が明治時代に横浜へ移転した跡地に建てられた寺院です。2007年の能登半島地震で被災し、2021年に完全復興したなかで今年正月の能登半島地震で再び多大な被害を受けました。今回の重文指定は被災前から準備が進められていたとのことですが、重文に指定されたことで国の補助が得られるようになりましたので、それが再復興の道筋になるのではないでしょうか。

 弘法大師空海が開いた金剛峯寺の壇上伽藍に建ち並ぶ堂宇も重文に。指定は「金剛峯寺 9棟」と「金剛峯寺金堂及び根本大塔 2棟」の2件に分かれていますが、これは前者が江戸時代の木造、後者が昭和初期の鉄筋鉄骨コンクリート及び木造と時代区分・工法が違うためです。金剛峯寺は今年の1月に本坊も重文に指定されましたし、これで金剛峯寺のほぼ全体の建造物が重文になった形となります。


壇上伽藍の中核である根本大塔は昭和12年に再建された

 瀬戸内海を見渡す五色台にある瀬戸内海歴史民俗資料館も重文に。昭和48年(1973年)の建造で、1970年代の建築として初めての指定、最も若い重文になります。近代灯台の重文指定の流れとしては、今回は宮崎県日南市の大島に建つ鞍埼灯台が重文になります。

 ――という感じでした。件数こそ少な目ですが、粒ぞろいだと思います。重伝建の選定がないのは少し残念でした。

posted by きむら at 13:10 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財