2024年05月18日

【文化審議会答申】国宝・重要文化財(建造物)の指定および重伝建の選定について


 5月17日(金)に開催された文化審議会において、「国宝・重要文化財(建造物)の指定」および「重要伝統的建造物群保存地区の選定」の答申がありました。内容は以下の通りです。

《重要文化財》新指定
・旧岩淵水門 1基【東京都北区】
・旧小菅刑務所庁舎 1棟【東京都葛飾区】
・園城寺 5棟 観音堂、札所鐘楼、百体堂、観月舞台、絵馬堂【滋賀県大津市】
・對龍山荘 4棟 主屋、北土蔵、南土蔵、表門【京都府京都市】
・齋神社本殿 1棟【京都府綾部市】
・郭家住宅 10棟 洋館、診察棟、座敷、離れ、米蔵、東土蔵、南土蔵、風呂、外便所、表門及び石塀、土地【和歌山県和歌山市】
・旧大浜埼通航潮流信号所施設 1棟、3基 通航信号塔、昼間潮流信号機、夜間潮流信号塔(大浜埼灯台)、検潮器浪除塔【広島県尾道市】
・金刀比羅宮 12棟 本宮本殿・中殿・拝殿、本宮神饌殿、本宮直所、別宮本殿・中殿・拝殿、別宮神饌殿、祓除殿、南渡殿、神楽殿、御炊舎、神輿庫、神庫【香川県仲多度郡琴平町】

《国宝》追加指定
・法隆寺金堂 附・古材 3284点【奈良県生駒郡斑鳩町】

《重要文化財》追加指定
・菅野家住宅 3棟 離れ座敷及び台所、一番蔵及び四番蔵、二番蔵及び三番蔵、土地【富山県高岡市】
・旧山邑家住宅 土地【兵庫県芦屋市】

《重要伝統的建造物群保存地区》
・佐渡市小木町【新潟県佐渡市】
・須坂市須坂【長野県須坂市】

 東京は赤羽駅の近く、荒川と隅田川の分岐点に構えられた「旧岩淵水門」が重文になります。大正5年(1916年)に着工し、大正12年(1923年)に竣工した、当時としては先進的な鉄筋コンクリート造の近代水門です。

 同じく東京にある「旧小菅刑務所庁舎」も重文に。刑務所施設では「旧網走監獄」「旧奈良監獄」に続く3例目の指定です。網走監獄は木造、奈良監獄は煉瓦造ですが、昭和4年(1929年)竣工の小菅刑務所は鉄筋コンクリート造。近代における刑務所施設の変遷が追える感じで面白いですね。

 滋賀県の大津市にある「園城寺(三井寺)」は国宝に指定されている「金堂」「新羅善神堂」「勧学院客殿」「光浄院客殿」をはじめ、他にも数多くの建造物が重要文化財に指定されている古刹です。今回は境内の南側、西国三十三所観音霊場の第十四番札所として江戸時代中期から後期にかけて整備された「観音堂」を中心とする南院の建造物群が重文になります。

 寺社建築としては、「こんぴらさん」として有名な金刀比羅宮の中核を成す社殿群も重文に。金刀比羅宮は江戸時代建立の「旭社」「表書院及び四脚門」「裏書院」「旧金毘羅大芝居」が既に重文に指定されていますが、今回は明治の神仏分離による再整備で築かれた社殿群の指定です。


明治初頭に仏教要素を除いて築かれた「金刀比羅宮」の社殿群

 ここ数年は近代灯台の重文指定が続いていますが、今回も因島の北東にある「旧大浜埼通航潮流信号所施設」が指定の答申を受けました。正確には航行船舶の状況や潮流の方向を知らせていた施設(現在は灯台としても利用)ですが、灯台を含む航路標識施設の文化財に厚みが増した感じですね。

 重伝建の答申は「佐渡市小木町」「須坂市須坂」の2件。いずれも以前から重伝建を目指す動きがあった地区です。特に小木町は申請の状況をかなり細かく知ることができ、もうまもなく選定されるだろうというところでした。


宿根木に続き、佐渡で2件目の重伝建となる「小木町」の町並み

 須坂は結構前に選定を目指す動きがあり、私は2015年に現地の町並みを見に行きました。以降の動きはつかめてなかったのですが、このタイミングでの選定とは結構意外でした。須坂は道路の整備・拡張によって町並みが断片化されていた印象でしたが、十字に交差する旧街道沿いを中心に選定範囲をうまくまとめたみたいですね。


製糸業で繁栄した商家町の歴史を伝える「須坂」の町並み

 とまぁ、今回はこんな感じでしょうか。次回は6月第3金曜にある(と思われる)史跡名勝天然記念物の指定ですね。楽しみです。

posted by きむら at 10:34 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財