2022年08月01日

【文化審議会答申】史跡等の指定等について


 6月17日(金)の文化審議会において、「史跡等の指定等」の答申がありました。内容は以下の通りです。

《史跡》
・鎌倉街道上道【埼玉県入間郡毛呂山町】
・夕田墳墓群【岐阜県加茂郡富加町】
・芥川城跡【大阪府高槻市】
・郡山城跡【奈良県大和郡山市】
・新宮下本町遺跡【和歌山県新宮市】
・熊本藩高瀬米蔵跡【熊本県玉名市】
・轟貝塚【熊本県宇土市】
・里官衙遺跡【大分県大分市】
・立切遺跡・横峯遺跡【鹿児島県熊毛郡中種子町・南種子町】

《登録記念物(遺跡関係)》
・徳島堰【山形県韮崎市・南アルプス市】

《登録記念物(名勝地関係)》
・岡山氏庭園(養浩園)【茨城県常陸大宮市】
・法師庭園【石川県小松市】

《史跡の追加指定及び名称変更》
・綴喜古墳群 大住車塚古墳 八幡西車塚古墳 天理山古墳 飯岡車塚古墳【京都府八幡市・京田辺市】
・讃岐遍路道 曼荼羅寺道 善通寺境内 根香寺道 志度寺境内 大窪寺道【香川県さぬき市】
・伊予遍路道 観自在寺道 稲荷神社境内及び龍光寺境内 仏木寺道 明石寺境内 大寶道道 大寶道境内 岩屋寺道 岩屋寺境内 浄瑠璃地道 横峰寺道 横峰寺境内 三角寺奥之院道【愛媛県上浮穴郡久万高原町】

 飯盛山城に続き、最初の天下人こと三好長慶の居城であった中世山城「芥川城跡」が史跡指定です。飯盛山城はハイキングコースとして整備されていますが(意外と険しい山なので登るのは結構大変でした)、芥川城は私有地らしくまだあまりカッチリとした整備は行われていないという印象です。が、尾根を断ち切った堀切や曲輪群、石積の城門など見ることができました。何より主郭からは堺と京を結ぶ一帯を見渡すことができ、まさに畿内を統治するに最適な山だと体感できます。


芥川城跡の大手石垣


芥川城跡主郭からの眺め

 大和郡山藩の政庁であった近世城郭である「郡山城跡」も史跡に。筒井順慶が築城し、その後に豊臣秀吉の弟であり右腕であった豊臣秀長が畿内統治の拠点として大々的に整備した平山城です。近年天守台が修復・整備され、極楽橋が架けられるなど史跡公園としての整備が進んでいます。天守台には地蔵や墓石などの転用石も多く、大和には良い石切り場がなく周囲の寺院から石材をかき集めた様子がうかがえます。


近年修理され展望台となった郡山城跡の天守台


天守台を築くのに利用した転用石のひとつ「逆さ地蔵」

 個人的な毎度のお楽しみ、四国遍路関係では『讃岐遍路道』に「志度寺境内」が追加、『伊予遍路道』には「大寶寺境内」「岩屋寺境内」「浄瑠璃寺道」が追加されます。このうち浄瑠璃寺道は河合集落から高野集落へ続く「千本峠」の区間です(久万高原町教育委員会に確認しました)。荒れていると聞いていたのですが、近年整備されて現在は歩くことができるようになっているようです。遍路道の史跡指定は地権者との交渉など大変な労力が必要かと思いますが、少しずつ進めていっていただければと思います。

posted by きむら at 16:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

【文化審議会答申】国宝・重要文化財(建造物)の指定について


 サイト・ブログともに更新が滞ってしまい申し訳ありません。今更な感じではありますが、5月20日(金)の文化審議会において、「国宝・重要文化財(建造物)の指定について」の答申がありました。内容は以下の通りです。

【重要文化財】
・中谷家住宅(石川県鳳珠郡能登町字黒川) 5棟 主屋、離れ座敷、土蔵、奉公人部屋及び東塀、正面門(石川県鳳珠郡能登町)
・洲さき 3棟 主屋、客間棟、土蔵(岐阜県高山市)
・清水灯台 1基(静岡県静岡市)
・小栗家住宅 12棟 主屋、書院及び茶室、北座敷、西誓院、隠宅及び竹の間、辰巳蔵、乾蔵、文庫蔵、新蔵、道具蔵、表門(愛知県半田市)
・菅島灯台 1基(三重県鳥羽市)
・十二社神社本殿 1棟(奈良県大和高田市)
・吉野神宮 26棟、3基 本殿、祝詞舎、楽舎(2棟)、裏門及び透塀、神庫、拝殿、廻廊(2棟)、内玉垣、神門、神符授与所、宿衛舎、摂社御影神社本殿、摂社船岡神社本殿、摂社瀧櫻神社本殿、摂社拝殿、東門、外玉垣、表手水舎、裏手水舎、修祓所、神饌所、井戸屋形、制札屋形、大鳥居、裏鳥居、参集殿(奈良県吉野郡吉野町)
・耶馬渓橋 1基(大分県中津市)

【国宝(追加指定)】
・薬師寺東塔 附・古材 1540点(奈良県奈良市)
・唐招提寺金堂 附・古材 11点(奈良県奈良市)
・唐招提寺講堂 附・古材 53点(奈良県奈良市)
・唐招提寺鼓楼 附・古材 21点(奈良県奈良市)
・唐招提寺宝蔵 附・古材 4点(奈良県奈良市)
・唐招提寺経蔵 附・古材 9点(奈良県奈良市)

【重要文化財(追加指定)】
・旧千葉家住宅(岩手県遠野市綾織町)宅地の内 便所(岩手県遠野市)
・幡頭神社 2棟 境内社熊野社本殿、境内社神明社本殿(愛知県西尾市)
・不動寺本堂 1棟 背面突出部、礼堂、附・厨子及び須弥壇(滋賀県大津市)

 今回も順当な答申といった感じですね。これまでの流れ通り、近代灯台の重文指定が進められています。また修理が終わった薬師寺の東塔や唐招提寺の国宝堂宇では、修理の際に再利用できず新材に取り換えられた古材が附けたりとして追加指定されています。

 新指定で目を引くのが吉野山に鎮座する吉野神宮。近代神社の造営に携わった角南隆(すなみたかし)の初期作です。平安神宮、明治神宮に続き、今後も近代神社社殿群の重文指定は続いていくのではないかと思います。

 国の名勝に指定されている耶馬渓に架かる耶馬渓橋は、観光促進を図るべく大正時代に築かれたもので、石橋としては日本一の長さ。近世より培われてきた石橋の技術を遺憾なく発揮しており、現在も耶馬渓のシンボル的な存在として親しまれています。

 以上です。6月17日の文化審議会では「史跡等の指定について」の答申がありました。こちらも後ほど記事を作成したいと思います。

posted by きむら at 15:44 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財