2020年1月17日(金)に開催された文化審議会で「重要有形民俗文化財の指定等」の答申がありました。内容は以下の通りです。
《重要有形民俗文化財の指定等》
・行田の足袋製造用具及び関係資料【埼玉県行田市】
・志木の田子山富士塚【埼玉県志木市】
・立山信仰用具(追加指定)【富山県富山市】
《重要無形民俗文化財の指定》
・近江湖南のサンヤレ踊り【滋賀県草津市、栗東市】
・近江のケンケト祭り長刀振り【滋賀県守山市、甲賀市、東近江市、蒲生郡竜王町】
・因幡・但馬の麒麟獅子舞【鳥取県鳥取市、岩美郡岩美町、八頭郡八頭町・若桜町、東伯郡湯梨浜町、兵庫県美方郡新温泉町・香美町】
・博多松囃子【福岡県福岡市博多区】
・感応楽【福岡県豊前市大字四郎丸】
・与論島の芭蕉布製造技術【鹿児島県大島郡与論町】
《登録有形民俗文化財の登録》
・武庫川女子大学近代衣生活資料【兵庫県西宮市池開町】
・別府の湯突き用具【大分県別府市上野口町】
《記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財の選択》
・浜通りのお浜下り【福島県新地町、相馬市、南相馬市、相馬郡飯舘村、双葉郡浪江町・双葉町・大熊町・富岡町・楢葉町・広野町、いわき市】
・近江の郷祭り【滋賀県】
・東坊城のホーランヤ【奈良県橿原市東坊城町】
・山中のお改めとシシ狩り行事【島根県江津市桜江町長谷】
・池田の柴祭り【鹿児島県肝属郡錦江町池田】
前回の答申で特別史跡に格上げされることになった埼玉古墳群を擁する行田市から「行田の足袋製造用具及び関係資料」が重要無形民俗文化財になることに。行田は江戸時代より足袋の生産が盛んな土地であり、明治に入ると機械の導入によりさらに生産が拡大。最盛期の昭和初期には全国の約80%が行田産だったといいます。現在も町のあちらこちらに足袋をストックしておく足袋蔵が見られ、また縫製工場も残っています。その行田足袋の製造技術の変異を示す製造具と関連資料の計5484点が指定対象とのこと。

今も数多くの足袋蔵が残る行田の町並み
古くより信仰の対象であった富士山。江戸時代の中期以降は富士講による富士登山が盛んに行われていましたが、そう簡単に行ける所でもないことから、誰もが簡単に富士登山を体験できるミニチュア富士山「富士塚」が東京都や埼玉県などに数多く作られました。「志木の田子山富士塚」は明治5年(1872年)に完成したもので現状態が良く、規模も大きく優美かつ富士塚要素を良く備えるものとして重要有形民俗文化財になります。富士塚は「豊島長崎の富士塚」など4件が既に重要有形民俗文化財となっており、これで5件目です。これまでのものはすべて江戸時代に築かれたものなので、明治時代のものとして初めての指定となります。

富士塚はこういう富士山を模した築山です
(これは東京都文京区護国寺のもので、今回指定されるものではないです)
重要無形民俗文化財では滋賀県から「近江湖南のサンヤレ踊り」と「近江のケンケト祭り長刀振り」の二つの祭礼芸能が指定されることに。サンレヤは囃子詞、ケンケトは口唱歌を意味するそうですが、いずれもユニークで楽し気なつい口に出してみたくなる響きですね。
それにしても、通年なら2月の「重要有形民俗文化財」の答申が1月に来たのは意外でした。3月の「国宝・重要文化財(美術工芸品)」も前倒しになったりするのかな。