2019年07月15日

第43回世界遺産委員会


 アゼルバイジャンの首都バクーにて、6月30日から7月10日にかけて第43回世界遺産委員会が開催されました。新たに世界遺産リストに記載されることになった物件は以下の通りです。(各項目をクリックすると「UNESCO World Heritage Center」の英語サイトを開きます)

【自然遺産】
中国の黄海・渤海沿岸の渡り鳥保護区(フェーズ1)(中国)
フランス領南方地域の島と海(フランス)
ヴァトナヨークトル国立公園‐火と氷のダイナミックな自然(アイスランド)
ヒルカニアの森林群(イラン)

【複合遺産】
パラチとグランデ島 - 文化と生物多様性(ブラジル)
・<拡張>オフリド地域の自然文化遺産(アルバニア)

【文化遺産】
バジ・ビムの文化的景観(オーストラリア)
シェキ歴史地区とハーン宮殿(アゼルバイジャン)
ディルムンの墳墓群(バーレーン)
ブルキナファソの古代製鉄遺跡群(ブルキナファソ)
ライティング=オン=ストーン/アイシナイピ(カナダ)
良渚考古遺跡(中国)
クラドルビ・ナト・ラベムの儀式用馬の繁殖および訓練の景観(チェコ)
エルツ山地/クルスナホリの鉱山地域(チェコ・ドイツ)
アウクスブルクの水管理システム(ドイツ)
ジャイプル市街地;ラジャスターン(インド)
サワルントのオンビリン炭鉱遺産(インドネシア)
バビロン(イラク)
コネリアーノとヴァルドッビアデーネのプロセッコの丘(イタリア)
百舌鳥・古市古墳群:古代日本の墳墓群(日本)
バガン(ミャンマー)
シェンクアンの巨石壺遺跡群‐ジャール平原(ラオス)
クシェミオンキの先史時代燧石採掘地域(ポーランド)
ブラガのボン・ジェズース・ド・モンテの聖域(ポルトガル)
マフラの王家建造物群‐宮殿、教会、修道院、セルコ庭園、狩猟公園(タパダ)(ポルトガル)
書院、朝鮮宋明理学校群(韓国)
プスコフ建築派の教会群(ロシア)
リスコ・カイドとグラン・カナリア島聖山群の文化的景観(スペイン)
ジョドレル・バンク天文台(イギリス)
フランク・ロイド・ライトの20世紀建築(アメリカ)

 またメキシコの「カリフォルニア湾の島々と自然保護区群」が新たに危機遺産リストに記載され、パレスチナの「イエス生誕の地 : ベツレヘムの聖誕教会と巡礼路」とチリの「ハンバーストーンとサンタ・ラウラの硝石工場群」が危機遺産リストから外されることになりました。

 まずは「百舌鳥・古市古墳群」の世界遺産リスト記載おめでとうございます。日本一巨大な「大仙古墳」や三番目に巨大な「ミンザイ古墳」などを含む「百舌鳥古墳群」と、二番目に巨大な「誉田山古墳」などを含む「古市古墳群」の二つの古墳群、計49基の古墳からなります。私は2009年に当時住んでいた近くの八尾空港からセスナをチャーターして二つの古墳群を眺め、デイリーポータルZの記事にしました。→「古墳を空から見てみたい


あまりに巨大な「大仙古墳」

 ラオスの「ジャール平原」は巨大な石の壺がゴロゴロと転がる不思議な遺跡です。その正体は、紀元前5世紀から5世紀にかけて1000年に渡って築かれた墓とのこと。私は2005年に訪れたのですが、当時はジャール平原への山道に山賊が出るとのことでビエンチャンやルアンパバーンほど観光客は入ってない印象でした。今はどうなのかな。


石の壺がゴロゴロ転がる「ジャール平原」

 町並みがピンク色で統一された「ピンクシティ」として有名な、インドの「ジャイプル」は記載延期勧告からの記載決議。専門機関の評価を委員会で覆すのは良いことだとは思いませんが、まぁ、それはともかくジャイプルは個人的に思い入れのある町だったりします。王宮の一角にある天文台「ジャンタル・マンタル」は既に個別で世界遺産リストに記載されていますが、二重記載になるのかな。


ジャイプルのシンボル的な存在である「風の宮殿」

 「フランク・ロイド・ライトの20世紀建築」は「ル・コルビュジェの建築作品」と同様、建築家に焦点を当てたモダニズム建造物群の世界遺産。現在は「グッゲンハイム美術館」や「落水荘」など米国内の8件の建造物が対象ですが、フランク・ロイド・ライトは日本にも帝国ホテルや自由学園など複数の作品を残しており、そのうち兵庫県の芦屋市にある「旧山邑邸」は今後の拡張の有力候補なのだとか。

 他にも、イラクの「バビロン」やミャンマーの「バガン」といった超有名どころも見られますが、先史時代の製鉄や燧石採掘といったシブい考古遺跡も興味深いですね。来年の世界遺産委員会は中国の福州で開催。日本からは「奄美大島、徳之島、沖縄島北部、西表島」が審議される予定です。

posted by きむら at 19:14 | Comment(0) | TrackBack(0) | 世界遺産

2019年06月22日

史跡等の指定等について


 2018年6月21日(金)に開催された文化審議会で「史跡等の指定等について」の答申がありました(→文化庁サイト)。内容は以下の通りです。

【史跡】
・伊達氏梁川遺跡群(福島県伊達市)
・岩櫃城跡(群馬県吾妻郡東吾妻町)
・下総佐倉油田牧跡(千葉県香取市)
・墨古沢遺跡(千葉県印旛郡酒々井町)
・本ノ木・田沢遺跡群 本ノ木遺跡 田沢遺跡 壬遺跡(新潟県中魚沼郡津南町・十日町市)
・水軒堤防(和歌山県和歌山市)
・若杉山辰砂採掘遺跡(徳島県阿南市)
・紫雲出山遺跡(香川県三豊市)

【名勝】
・西山氏庭園(青龍庭)(大阪府豊中市)
・満濃池(香川県仲多度郡まんのう町)

【天然記念物】
・青野山(島根県鹿足郡津和野町)

【登録記念物】
・旧林氏庭園(愛知県一宮市)
・八束氏庭園(愛媛県松山市)
・平田氏庭園(大分県中津市)

【重要文化的景観】
・今帰仁今泊のフクギ屋敷林と集落景観(沖縄県国頭郡今帰仁村)

 真田氏の本拠地である上田城と、北関東の重要拠点である沼田城を繋ぐ交通の要衝に位置する群馬県の「岩櫃城跡」。四月に続100名城巡りで訪れたばかりなので記憶に新しいです。岩櫃山の中腹に築かれている山城で、主郭を中心に竪堀や横堀が巡らされています。城自体も素晴らしいのですが、岩櫃城へと至る未舗装の山道がまた雰囲気満点で良かったです。ここはぜひ、群馬原町駅から徒歩での登城がオススメです。


岩櫃城の主郭から伸びるダイナミックな竪堀

 徳島県の山間、四国遍路第21番札所太龍寺へ登る遍路道沿いに位置する「若杉山辰砂採掘遺跡」は、弥生時代後期から古墳時代前期にかけての辰砂の採掘場跡です。辰砂から作られる顔料の朱は、古代の葬送儀礼に不可欠なもので、権力の象徴とされていました。露頭掘りの跡のみならず坑道も発見されており、古代日本における採掘技術の高さに驚かされます。四国遍路をやっていた時に説明板を見ましたが、木々に覆われた山の中ということもあり肝心の採掘跡は分かりませんでした。今後は整備されたりするのかな?


遍路道から見た若杉山遺跡。採掘跡はちょっと分からない

 遍路道の追加指定もありました。「阿波遍路道」では第4番札所大日寺の境内、第5番札所地蔵寺の境内を追加、「伊予遍路道」では第43番札所明石寺境内と、明石寺から宇和の町へ抜ける山道が大寶寺道として追加されます。遍路道のみならず、札所の指定もちょくちょく増えてきました。……が、まだまだごく一部。四国遍路全体の十分な保護が完了するまでの道のりは長いですね。地道に指定を続けていってもらいたいです。


明石寺から続く遍路道に残る切通し

 遍路繋がりでは大宝年間(701〜704年)に築かれ、その後の弘仁12年(812年)に弘法大師空海が修復したとされる「満濃池」が名勝に指定されます。古代に遡る日本最古級のダム湖として有名ですね。古来より著名な名所としての風致景観が評価され、ため池として初の名勝に。


今昔物語に「まるで海のよう」と記された満濃池

 重要文化的景観の選定は「今帰仁今泊のフクギ屋敷林と集落景観」の一件。先日の沖縄旅行の際に立ち寄っており、実にタイムリーでした。今帰仁城の下にある今泊は、直線状に通された路地にフクギの屋敷林が並び立ち、沖縄の伝統家屋が数多く残る集落です。その独特な風情に重要伝統的建造物群保存地区になってもおかしくないと思ってましたが、まさか重要文化的景観でくるとは。選定範囲は今泊集落のみならず、国指定史跡の今帰仁城やその側の旧集落、国指定名勝「アマミクヌムイ」の一部であるクバの御嶽なども包括するようです。


今泊集落のフクギ並木と伝統家屋

 さてはて、今年も6月末から7月頭にかけて世界遺産委員会が開催されます。日本が推薦した「百舌鳥・古市古墳群」は既にICOMOSから記載勧告を受けており、問題なくその通りの決議になることでしょう。個人的には記載延期や情報照会の勧告を受けた案件がどうなるのか、今年も注視したいと思います。

posted by きむら at 14:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財

2019年05月27日

国宝・重要文化財(建造物)の指定について


 先日、沖縄から戻ってきました。主目的であった大東島をはじめ、とても収穫の大きい取材旅行だったと思います。今後、少しずつ記事化していきたいと思います。

 さて、そんなさなかの2018年5月17日(金)に開催された文化審議会において「国宝・重要文化財(建造物)の指定について」の答申がありました(→文化庁サイト)。内容は以下の通りです。

【国宝】
・旧開智学校校舎(長野県松本市)

【重要文化財】
・旧柏倉家住宅(山形県東村山郡中山町)
・旧山崎家別邸(埼玉県川越市)
・永平寺 仏殿、法堂、山門、中雀門、僧堂、大庫院、大光明蔵、監院寮、回廊(5棟)、承陽殿本殿及び拝殿、承陽門、経蔵、松平家廟所門、舎利殿及び祠堂殿、勅使門(福井県吉田郡永平寺町)
・早川家住宅 主屋、裏座敷、洋館、辰巳庫、下男部屋、辰巳隅職人部屋、飯米蔵、西ノ庫、土地(岐阜県海津市)
・真宗本廟東本願寺 御影堂、阿弥陀堂、御影堂門、阿弥陀堂門、鐘楼、手水屋形(京都府京都市)
・根来寺 大伝法堂、光明真言殿、大門、不動堂、行者堂、聖天堂(和歌山県岩出市)

【重要文化財(追加指定)】
・旧西尾家住宅 外塀、内塀(大阪府吹田市)
・福田家住宅 上の蔵、下の蔵、土地(鳥取県鳥取市)

 松本城の北側に位置する旧開智学校が国宝指定です。明治9年(1876年)に建てられた擬洋風建築で、西洋文化を受け入れ始めた黎明期の代表例として重要かつ、近代教育の始まりとしても歴史的な価値が高い建築です。


八角形の塔や、車寄せの装飾が印象的な「旧開智学校校舎」

 近年は国宝建築を持たない県から国宝が選ばれることが多いのですが、今回は国宝の多い長野県から。とはいえ、これまで国宝になかった明治初期における擬洋風の近代学校建築ということで、その指定には大いに納得です。

 国宝近代建築の厚みが徐々に増していってる感じで、今後も近代建築評価の流れは続いていきそうですね。次に国宝になる近代建築の私の予想は、ズバリ、新一万円札の絵柄にもなる「東京駅丸ノ内駅舎」! さてはて、どうでしょうか。

 重文では、永平寺、東本願寺、根来寺といった大寺院が目を引きます。いずれも幕末から近代にかけて整えられた伽藍で、ようやく重文になるのかって感じですね。特に明治28年(1895年)に再建された東本願寺の御影堂や阿弥陀堂は木造仏堂としては最大規模で、まだ重文でなかったのが不思議なくらい。

 残念ながら今回は重要伝統的建造物群保存地区の選定はなし。次の文化財答申は、来月中旬の史跡等指定ですね。楽しみです。

posted by きむら at 14:20 | Comment(0) | TrackBack(0) | 文化財